まだ真っ暗な時刻から車を走らせて今年初めて海が見える所までドライブして来た。
街灯が照らす国道を走る車は殆ど無く、窓を開け涼しい風を受けて走るのは爽快だ。
自宅から持ち出したお気に入りの音楽を聴きながら、殆ど貸し切り状態になっている広い道路をひたすら南下する。
東側の空が薄明るくなる頃には市街地を抜け、田畑に囲まれた風景が開けて来た。
赤信号で止まった交差点でコンビニで買った冷たい缶コーヒーを開けた。
やや苦みの効いたブラックコーヒーをひとくちだけ飲むと信号が青に変わった。
ヘッドライトに頼らなくても周囲が見えるようになって来たころ、穏やかな海が視界に入って来た。
車を停められそうな所を探していると、丁度いい場所が見付かった。
車を停めてさざ波の音を聴きながら暫く水平線を眺めていた。
潮の香りが懐かしくさえ感じるくらい久し振りの海。
車から降りて波打ち際まで行ってみると、砂や波で削られた白い小さな貝殻が所々に広がっていた。
本当に穏やかで静かな海だ!
夜明け前のせいかカモメやトンビはまだ姿を現わさない。
犬を連れて散歩をする人影が遠くに見える。
自粛自粛で思うように行動出来ずに既に8月の後半に差し掛かっている。
この静かな海のように、色々な出来事が穏やかに収まってくれたらと願う。
車に戻り暫くボーッとしながら眺めていた海にも夜明けがやって来た。
東側の山間からお日様が顔を出し眩しい光がフロントガラスを照らし始めた。
30分程海を眺めて帰路につくことにした。
今度来る時は、街路樹の欅の葉が歩道に舞う頃かも知れない。
その頃にはマスク姿で覆われた社会も少しは穏やかになってくれるといいのだが。